2009年3月5日木曜日

Bed project Statement

 海外派遣の醍醐味は「孤独」だと思う。なれ親しんでいる環境を離れ自己と向き合わされる。

 環境が異なり、母国語が通じないというだけで、たわいもないマーケットでの買い物でも自己防衛機能が起動し、肉体的、精神的、思考的に自己を守ろうとはたらき寡黙になろうとする自分がいやでも存在している。そして、その存在を常に感じながら毎日を過ごす。実はそれは常に存在しているものだが、「親しんでいる守られた環境」の外に出ることによって光が当てられ、その存在が明らかになる。そして、否応なく自分と向き合わされる。自分は何故存在して、作っているのか。人種や国や社会や経済…。様々なことに対して脳が目覚め回り続ける。

 派遣先にNYを選んだのは、受け入れ先があったことが一番の理由だが、他の地域にはない「緊張感」と「厳しさ」そして溢れる「エネルギー」の中に身を置いてみたかったことがある。中途半端なものを提示できないという緊張感と恐怖感。とにかく自分を捨ててやりきることを短期間の中で自分に課す。そういう状況に自分をおいてみたかった。

 今回は、会場にベッドを置き、手で塗ってもらうという作品を試みた。

 なぜベッドなのか。

 それはこの滞在を通して、人は心地の良い空間にとどまろうとする習性があり、しかし、そこにとどまっていては何も新しいものを創りだすことは出来ないということに気付かされたこととリンクする。

「手をよごす」という慣用句は、「悪いこと・好ましくないことを行なう。」という意味もあるが、「自分の身体で実際に体験し、その苦労を味わって物事を行う。」という対照的な意味合いを含んでいる面白いものである。

 今回は、手で塗る(手をよごす)行為の背後にあるさまざまな複合的な意味をとらえつつ、人々にとって心地の良い居場所の象徴でもあるベッドに手で塗るという行為を通して、異文化間においても、いかに体現化するのか試みたかった。

 この作品はまさに今回の海外派遣の産物であると思う。

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